仮想通貨(暗号資産)は常に不安定な市場であり、私たちの予測を超える出来事がほぼ毎日のように起こっています。
どんなに不明確な蜃気楼だったとしても、確固たる信念で未来を確実なものとしつつあるクリプト界隈を震撼させる事件が起こりました。
昨年から破竹の勢いで成長を続ける暗号資産LUNA、分散型でありながら驚異的なTVLを誇りステーブルコイン時価総額3位まで急上昇中のUST。関連ニュースを見ない日がないほどに人気を獲得した両者の崩壊が突如として始まりました。これは市場を大混乱に導くには大きすぎる事件であり、クリプトの冬を招くには十分すぎるインパクトを持っています。
今回は、LUNAの崩壊はどのように起こったのか。まことしやかに噂される崩壊の真相と併せて書いていこうと思います。
LUNAとは?
そもそもLUNAとは何なのか?
詳しく書くとこれだけで1記事になってしまうし、ホワイトペーパーはめちゃくちゃ難しいことを英文で、しかも長文で書いているため、かなりの有識者か暇人でない限り睡魔に襲われること間違いなしでしょう。なのでサクッと簡単に説明すると
「LUNAは非中央集権的で価格安定性の高いマネープロトコルを目指しています」
要するに中央集権的なサービスだと、不透明な資金の流れにより不当なコストが発生してしまいがちです。LUNAはその不透明さを改善しようとしているプロジェクトです。
そしてそれを実現するために、USTというステーブルコインを発行しユーザビリティを向上させているのです。ちなみに「非中央集権的」というところが今回とても重要な部分となってきます。
2021年後半あたりから優秀なプロジェクトの発足、使いやすさなどからLUNAは急激な成長を見せ、瞬く間に時価総額ランキングTOP10入りを果たします。そんな躍進劇に必要不可欠だったのがUSTだったのです。
LUNAとUSTの関係性
現在主流となっているステーブルコインは、ドルペッグといってドルをステーブルコインにペッグさせて1ドルの価値を保っています。今1番使われているステーブルコイン$USDTは、このドルペッグによって価格が担保されており価格変動が起こらないよう運営元であるテザー社が管理しているのです。
このようなドルペッグ型ステーブルコインは、現状分散化されておらず中央集権的と言われています。
一方$USTは、ドルペッグを使わず$LUNAを担保に価格設定が行われており、$USTの発行数に応じて$LUNAがバーンされる仕組みになっています。さらに仕組みをシステム化して、非中央集権的なアプローチで供給量を調整している点が$USTの特徴と言えるでしょう。
$USTが使われるほど$LUNAがバーンされ、供給量が減り価値が高まっていくので$LUNAの時価総額が$USTの時価総額を常に上回り、安定した運用が行えるという仕組みです。
LUNA、UST崩壊
なぜ今回$LUNA、$USTの崩壊が起こってしまったのでしょうか?
結論はとても簡単で
$LUNAで$USTの価格が担保できなくなったからです。
崩壊の流れを簡単に説明すると、仮想通貨市場全体の相場が下落し$LUNAの価値も下落してしまいました。この時$USTにディペッグ(価格のズレ)が発生し、1UST=1ドルの均衡が崩れてしまいます。小さなズレは他のステーブルコインにも起こることでそこまで珍しいことではないです。
それを見た市場の人々は混乱を引き起こし、$LUNAの投げ売りが始まりました。
写真を見ると分かる通り、$LUNAの価格が暴落し時価総額が急落、$USTの時価総額を下回っていますね。こうなってしまうと、$USTの価格を$LUNAの価格が担保できていません。両者の崩壊待ったなしの状況となってしまいました。
ここからも崩壊は止まらず、記事執筆時点で$LUNAの価格はATH119.55ドルから0.036ドル付(執筆時)へと99%以上の大暴落を記録しています。
時価総額TOP10通貨がここまで下落するのは稀であり、ポートフォリオによっては精神崩壊レベルの大事件ですよね。
こうなることは予想できなかったのか?
実はこうなることがリスクの一つとして懸念されており、LUNA財団(以下LFG)は対策を講じていました。
その対策は、$LUNAの下落に対応できるよう準備資産として別の通貨を持つことです。実際にLFGは100億ドル相当の$BTC購入を目指し買い入れを始めていました。
結果LFGは、準備資産として30億ドル相当の$BTC、1億ドル相当の$AVAXを購入したと発表しています。
ここまでの対策を講じておきながらも、なぜこのような崩壊が起こってしまったのか疑問に思う方もいますよね。どうやら今回の事件
組織的犯行で$LUNAを失墜させたという見解が多いみたいです。
これはあくまでも噂なので真相は定かではないのですが、考察として非常に面白いと思いました。
なぜ崩壊は起こったのか
組織的犯行で今回の崩壊は起こったのではないか。SNSで度々議論された$LUNA崩壊までの流れ、攻撃がどのように実行されたのかを書いていきたいと思います。
まず犯行に及んだ組織を攻撃者とします。この攻撃者はOTC(市場を介さない)取引で10億ドルの$USTを獲得し、さらに30億ドルの$BTCを借り入れます。
その後、FUD(悪い噂)を流して、バンクラン(取り付け騒ぎ)を発生させ、同タイミングで借り入れた30億ドルの$BTCを市場に放出しパニックを引き起こしました。
一方LFGはこの時、Curveから流動性の一部を引き上げます。この流動性の引き上げから約10分後、攻撃者もCurveから流動性を引き上げ、取得していた$USTを全て売却する総攻撃を仕掛けたのです。※Twitterの情報にはCurveと書いてありますが、LUNAのレンディングプロトコルはAnchorなので書き間違いかもしれません。
すると急な売り圧力で$USTにディペッグが発生、すかさず攻撃者は$BTCの空売りを開始します。LFGはディペッグ調整のため、$BTCも売りを開始。LFGが$BTCを売却、なおかつ下落相場であったため$BTC価格が急落。人々は小さなパニックに陥ってしまいます。
LFGの$BTC売り圧力が大きかったため
人々は危険を察知し$USTを売る→さらに$USTがディペッグ→LFGがディペッグ調整で$BTC売り
といった最悪の循環が起こってしまいます。$BTCを空売りしていた攻撃者にとってはまさに望んでいた状況になりましたね。
完全に市場はパニックに陥り、チェーンは大混雑、バイナンスは$USTに取引制限を設け$LUNAの出金を停止する事態にまで発展しました。
大混乱の中、LFGは異変に気づきます。
「何者かによって価格操作されているのではないか?」
懸念を抱いたLFGは、一旦$BTCの売りを停止させます。するとディペッグはマーケットモジュールによって自然回復したのです。
事態は収束に向かうと思いきや、数時間後、攻撃者の攻撃が再度開始され$USTディペッグが再発。ついには$LUNA崩壊までの一路を辿ってしまったのです。
重要なポイントがあって、LFGがCurveから資金を引き上げたタイミングを狙っているという点です。ここを狙わなければ全てが成り立っていないので、偶然ではなく必然的に何者かが計画した犯行というのは濃厚なのかもしれません。
分散化されたステーブルコインだからこそ将来を有望視され注目され、分散化されたステーブルコインであったが為に崩壊してしまった。なんとも言えない気持ちになりますね。
$UST創設者のDo Kwon氏は過去にも失敗に終わったステーブルコインプロジェクト「Basis Cash」の偽名創設者であったことも判明し取り上げられています。何かあると過去を掘り返される悲しい現実を見た気がしますね。
ちなみに市場は悲壮感漂っていますが、LUNA陣営はまだ諦めていません。
歴史は繰り返す
過去には、現在ステーブルコイン時価総額1位である$USDTも過去にクジラから同様の攻撃を受け1USDT=0.57ドルまで下落しました。$ETHに関しても、1,400ドルから$80ドルへの大暴落を経験しています。かつて$TITANというアルゴリズム型ステーブルコイン関連の通貨がありました。$TITANも多くの人に有望視され大きく盛り上がりを見せたのですが、42億分の1まで大暴落するという歴史的通貨となってしまいました。
非中央集権的なステーブルコインにはまだ人類が乗り越えることのできない障壁があるのかもしれません。昨今トロンが新たなアルゴリズム型ステーブルコイン$USDDを発表しました。これからどうなっていくのか要チェックですね。
【歴史は繰り返す】
投資の世界ではよく言われる言葉ですが、忘れた頃に痛感することが多いように思えます。クリプトの世界では、とてつもない速さで破壊と創造が繰り返されています。誰もが疑わないほどの素晴らしいものが崩壊したとき、新たな破壊的イノベーションが起こるのでしょう。
まだまだ不安定な市場。また冬がやってくるかもしれません。ただ冬が明けた頃、私たちが見たことのない世界が待っているでしょう。
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